UVI Falcon レビュー
フランス・パリに拠点を置くディベロッパー UVIから、モンスターシンセ Falconをレビューします。
なんだかんだ持っておきながら、とっつきにくいなどの理由でスタックしてしまっている人が多いのではないかと思います!
私自身全てを使いこなしているわけではありませんが、できる限りでその魅力をお伝えできればと思います。特にシンセサイズの面を掘っていきます。
1 どんなシンセ?
17オシレーター、100以上のエフェクト、モジュレーションソース、スクリプト編集可能なMIDIプロセッサーによる高度なセミモジュラー型のサウンド デザイン環境
タイムストレッチ、ピットシフト、スライス、グラニュラーを装備した先進的なサンプルエンジン
UVIといえばサンプリングが有名で、ヴィンテージシンセサイザーを中心にさまざまな楽器をサンプリングして販売しているメーカーですが、なんと普通にシンセサイザーとしても機能がたくさんついています。
某柴犬さんが ラーメン屋なのにカレーも最強 と表現していますが、まさにその通りだと思います。
オシレータの内訳についてはUVIさんのページを参照されたし。
https://www.uvi.net/falcon.html
個人的にはFM音源が扱いやすく良いのではないかと思います。少なくとも既存のFM音源の中でわかりやすさはトップクラスでしょう。
ウェーブテーブルオシレータは際どいものが多いですが、研究のし甲斐がありそうです。
SERUMと同様、既存の波形をウェーブテーブルとして読み込んで再生できますよ! 再生エンジンの違いによる音の違いなんかを比べてみると面白いかもです。
2. こんな時に活躍する!
音について
soundcloud.comオシレーターの素の波形は綺麗で、サウンドは全体的に元気がありますね。
00'sのPCMシンセサイザーに近い印象があります。
とにかくリバーブをかけたい音をしていて、しかもそのリバーブ(SparkVerb)が気持ちいい。
ベルサウンドが美しいです。プリセットにはRoland D-50やYamaha DX7を思わせるプリセットがありますが、どれも再現度が高く心地よいです。
一方でEDM系サウンドは少し弱いかも...ただ全くできないわけではありませんので、そのような楽曲を作る人も持っていて損はないのではないかと思います。
こんな曲を作る人におすすめ
テクスチャオシレータやプラックオシレータ、FMシンセシスなど、綺麗なサウンドを得意とします。具体的には映画音楽、IDM、シンセウェーブなど。
また、ベルサウンドが豊富に含まれているので、ポップスにも十分使えます。
また、これまで別のシンセを使っていた場面でも、使える場面が十分あるといえるくらいのポテンシャルはあります。実はプリセットの中にはEDMのヒットトラックを思わせるものがいくつかあります。(DV&LM vs W&W - Arcade, R3hab & Headhunterz - Won't Stop Rocking, Ummet Ozcan - Wake Up the Sunなど)先ほどEDMが苦手と述べましたが、これらのBigroomアンセムやTranceなど、リバーブがものをいう楽曲にも使えるのではないかと考えます。
一方、EDM系、オランダ系と言われる中でも苦手なジャンルはあります。エレクトロなプログレッシブハウスやハードスタイルのリードなど、やや攻撃的な鋭いリードサウンドには向きません。これらの楽曲を作るならば、より定番とされるLennardigital Sylenth1, RevealSound Spireなどの方が向いているといえるでしょう。
3. ハードスタイルキックが作れる!
Falconのすごいところはオシレータもエフェクトも何本でも挿すことができる点です。つまりこれ一台でハードスタイルキックが作れてしまいます。
ハードスタイルキックはRoland TR-909系のキックを使ってイコライザとClip Distortionを交互に挿して作りますが、同じようなことがFalconでもできてしまうのです。
というわけで、実際に作ってみました!無料です。
実際に使った例です(エフェクト:iZotope Trash2, Logic Compressor) 1:39あたりから
いかがでしょうか。少しTailの方は低域が死んでいたので後からEQをかけ、サブベースを足しており、全体的にクオリティが低いと思いますが、Tokの方はかなりいい線をいっていると思っています。作り方については希望があればやりたいと思います!
4. Falconのここが良くない...
ここまでFalconの良さを説明しましたが、Falconにも弱点は結構あります。(UVIさんがこれをみてアップデートしてくれたらいいなあ...)
4.1. 高い
シンプルに高いです。定価は約350ドルでナント約4万7千円(1ドル=135円)です。学生には手が出せる金額ではないと思います。セールも良くて30%OFFとかです。
私は30%OFFの時に購入しましたが、かなり痛い出費だったと思います(学生なのによく買ったよな...)
一応確定で必ず100ドルクーポンが配布されるので、その分を考えればまあまあなものですがそれでも高い、と考える人は多いと思います。
4.2. RM(リングモジュレータ)がない
アナログシンセにはよくついているリングモジュレータ、これがありません。RMを使うえぐい音を出したいならば他のシンセをあたるべきでしょう。
4.3. FMの種類が少ない
ウェーブテーブルオシレータにもFMがついていますが、SERUMなどにあるように、モジュレータにウェーブテーブル波形を当てるといったことができません。当然ながらノイズでの変調もできません。攻撃的なサウンドを作るのには向かないでしょう。
4.4. フィルタの種類
フィルタはいわゆるモデリングが中心で、こちらももう少し種類があると良いと思います。とりわけ攻撃的なサウンドを作るのにはフィルタの数が少ないでしょう。これらをカバーできると良いとおもいます。SERUMなどについているReverbフィルタやRingModフィルタなどがあるとよりオールマイティなシンセになります。
5. まとめ
00'sPCMハードシンセを想起させる美しい音。攻撃的なえぐい音を作るのには向きませんが、モンスターシンセということでぜひ持っておくといいと思います。
いくつかのシンセはサウンドが被ってしまいそう(Tone2 Icarus, ROLI Cypherなど)ですが、それ以外のシンセとはほとんど被らないと思います。
音作りもプリセットマシーンとしても優秀です。
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